秋田書店名作・人気作

水島新司『ドカベン』

サンデーコミックス
秋田書店といえば、嘗ては日本漫画史に残る幾多の名作を出版している。それがサンデーコミックスで、小学館の『少年サンデー』と似ている点が紛らわしい。顔触れは手塚治虫の『海のトリトン』『鉄人２８号』『伊賀の影丸』『サイボーグ００９』『人造人間キカイダー』『宇宙戦艦ヤマト』『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』(まんだらけ中野店４Ｆ　秋田サンデーコミックス・リストより抜粋～wikipediaにリンクあり）等正に壮観というべきラインナップが揃っている。
がきデカ
私が小学生の頃、一大ブームを築き上げ、『少年チャンピオン』黄金時代の一角を担った山上たつひこのギャグ漫画。現在も『少年ジャンプ』で連載中の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』がスタートした当初、秋本治が『がきデカ』の人気にあやかり、山止たつひこのペンネームを用いていた程だ。内容は超低俗の下ネタのオンパレード。やたらと糞尿が登場。主人公こまわり君の破天荒なキャラとポーズが当時の読者に強烈なインパクトを与えた。
ふたりと五人
内容はあまり覚えていないが、これも『がきデカ』と同時期に『少年チャンピオン』で人気を博していた吾妻ひでおのエロティック・コメディーである。
ドカベン
『巨人の星』と共に野球漫画の最高峰に挙げられ、日本漫画史上に残る名作とされる水島新司の漫画。私にとっても『少年チャンピオン』を象徴する存在である。『巨人の星』がプロ野球、就中巨人人気を高めるのに貢献しているとすれば、『ドカベン』は高校野球人気を高めるのに貢献した。以後の漫画にもしばしばこの『ドカベン』の主人公、山田太郎をベースにしたキャラが用いられる程、大きな影響を齎した。この漫画の成功、それは正に主人公っぽくない山田太郎を主人公に据えた事にある。それによって、土井垣、里中、岩鬼、殿馬、微笑らのチーム・メイト、犬飼、不知火、土門らライヴァル達の個性が引き立つからである。勿論、キャラクターとしての個性を地味にして、他のキャラクターの魅力を引き出す反面、野球選手としての凄さを見せつける事で、山田太郎は充分に存在感を示している。続編の『大甲子園』では『球道くん』や『一球さん』等他の水島漫画の主役が揃い踏みし、更に豪華になっているが、これと更に続編の『ドカベン～プロ野球編』の頃には既に『少年チャンピオン』は嘗ての勢いを失っており、内容的にもやや色褪せた感がある。
因みに水島新司は他に『男ドアホウ甲子園』等も『少年チャンピオン』で連載している。『巨人の星』を筆頭に、プロ野球漫画といえば巨人の選手を描いた物が多いが、水島新司はＯＮが健在だった時代に阪神を題材にしたこの作品を書き、『あぶさん』では当時の南海を題材にしている。『ドカベン～プロ野球編』の山田太郎は西武の選手として活躍している。此処にも水島新司の個性が認められよう。何れにせよ、水島新司の数ある野球漫画の中で、『ドカベン』が巨大な存在感を誇っている事は確かで、だからこそ、シリーズ化され、もはや氏のライフワークと化したのである。
マカロニほうれん荘
当時は圧倒的な人気を誇った鴨川つばめの学園コメディー。新撰組をモティーフにした、インパクト充分のキャラ達の魅力が大きい作品だった。
らんぽう
『がきデカ』『マカロニ』と続いてきた強烈キャラを売りとするコメディーの流れを汲む内崎まさとしの漫画。主人公らんぽうの様々なポーズが当時の子供達に絶大なインパクトを与えた。
バキ
板垣恵介の人気格闘漫画。『グラップラー刃牙』から続くシリーズで、内容的には散漫で荒唐無稽とさえ言えるが、バトルの魅力がファンをひきつけている。
優駿の門
やまさき拓味の競馬漫画。公営競馬から中央に殴り込みをかけるジョッキーと馬の姿を描いた。レース・シーンの迫力は数ある競馬漫画の中でも屈指のものだろう。
その他
往年の人気作では『月とスッポン』『エコエコアザラク』『７５０ライダー』『ゆうひが丘の総理大臣』辺りも忘れてはなるまい。他では『軽井沢シンドローム』、立原あゆみの『本気』『ＪＩＮＧＩ』、『浦安鉄筋家族』『おまかせ！ピース電器店』『オヤマ！菊の助』『しまっていこうぜ！』『ななか6/17』『クローズ』『教科書にないッ』『恋愛ジャンキー』『フルアヘッド！ココ』『フジケン』『鬼組』『特攻天女』『虹色ラーメン』といった面々か。原作が有名な『池袋ウエストゲートパーク』『バトル・ロワイアル』『電車男』、アニメと密接にリンクしている『舞ＨＩＭＥ』等も現在の秋田書店を代表する漫画と言ってよい。メディカル・コメディーの『泌尿器科医一本木守』や、宅配便コメディーの『ゲッチューまごころ便』、中華料理店の看板娘の爆裂コメディー『無敵看板娘』、突然豪邸の主になった主人公とメイド達の共同生活を描いた『花右京メイド隊』等も根強いファンを持っている。とはいうものの、最近の秋田書店の漫画は殆ど読んでいないので、内容についてはコメント出来ない物が少なくない。何れ時間のある時に漫画喫茶等で一度は読んでおきたい。